「イエス・バット(yes but)法」で夫婦仲・カップル仲が良くなるんです!

Blue あなたとわたしの本 247

 

 

 ご夫婦のお話をよく聞かせていただきました。

 一時期、そんな機会が多くありました。

「ケンカが絶えない」と、みな仰るのです。

「実はこうこう、こんな感じでね」とご主人が言われます。

 すると間髪をいれずに奥さまが、

「あなた違うでしょ! こうこうこうでしょ!」と返される。

「お前、ちがうだろ! こうだろう!!」

ー! あなたこそ間違ってるわー!!」

 そして声をそろえてこう聞かれます。

「どうしてケンカが絶えないんでしょう?」

 ── そら絶えんやろと

 
 少し大げさに書きましたが、ほんとこんな感じなんですよ。

「イエス・バット法」は、営業シーンでよく使われる話法です。

 相手の発言を、「本当にそうですね(yes)」といったん肯定し、「でも(but)」と自分の伝えたいことを〝そのあと〟に言うトークスキル。「そうですね(yes)」といちど理解を示されていますから、意見を返されても心理的に相手は受け入れやすい、とされています。

 ただ、ビジネスシーンではすでに古い手、とも言われています。たしかに僕もそう思います。今は、

 イエス・アンド(yes and)法

 イエス・ソーザット(yes so that)法

 イエス・イフ(yes if)法

 イエス・ハウ(yes how)法

 など、いろいろありますので、興味のある方は調べてみてください。僕も営業の仕事をしていたことがあります。営業職の方は知らないよりかは知っていたほうがやはりいいでしょう。

 ── ただね、ご夫婦・カップル間ではね、「イエス・バット(yes but)法」がまだまだ功を奏するんです。全然、出来てないの、「イエス・バット法」でさえ。 but! but! but! なの。もひとつ but! but! but! なのよ。いきなり否定なんです。いきなり否定から入るんです。繊細な人はそれだけで傷ついちゃうんです。「ちがうでしょ!」「そうじゃねえだろう!」。そりゃ、ケンカも絶えないって。

 あと、「て、言うかぁ」「て、言うかぁ」が口癖のように出る方もいます。あれも but の一種です。いい印象を受けないですよね。 


 ご夫婦間で「イエス・バット法」を使ってみてください。

 たとえば、

「あなたがいいって言ったからあの小説読んだけど、ちっとも面白くなかったわよ!」と奥さんが詰め寄ってこられたとします。

「お前にセンス、ってもんがねえからだろうが!」と言い返したら、いろんな家財道具がひっくり返ることになります。そこはグッ、と我慢して、ご主人が、

「たしかにストーリーはありきたりだったかもしれないね(yes)」と言ったとする。

「そうなのよ」と奥さま。

「途中でオチも読めたしさ(yes)」

「そうそう」

「主人公もイマイチ魅力に乏しかったかもなぁ(yes)」

「そうかもね」

「ただ(but)、おれがいいって思ったのはおもに文章なんだよね。リズミカルで、無駄がなくって、ほんといい文章だった。風景描写なんかも目に見えるようでさ」

「それはそうね。あなたはそういう部分を読むものね」

 ── と、ならないですか? なるって。

 少なくとも、

「あなたがいいって言ったからあの小説読んだけど、ちっとも面白くなかったわよ!」

「文章がいいんだよ! 文章が! お前なんてどうせスジしか読んでねえもんなー!」

 って返すのとは雲泥の差でしょ? 

 良い例として書いた「イエス・バット法」は 共感(yes)を三回も示すスペシャルヴァージョンなので、相当ガンコな奥さまにも効果が期待できます。

 あるご主人に指摘されたことはあります。

「でもね、智(とも)さん、家庭内でそんな〝テクニック〟みたいなものを使うのは、水臭いんじゃないのかい? 言いたいことを言い合うのが家族でしょ?」

「たしかにそうですね。家族の前でくらい気持ちを緩めたいですよね。よくわかります(yes)。でも(but)、慣れるとテクニック、というほどのものでもないようですよ。いきなりあなたに否定されることによって家族の自尊心が低下したり、グッサリと傷つかれたりするくらいなら── よほどいいかもと、個人的には思います。何よりも大切な人たちですものね」

 それで納得される方もいます。納得されない方もいます。でも、「やってみたら簡単でした。家のなかが明るくなっただけじゃなく、私自身がより幸せを感じるようになりました」と言われる方のほうが多かったです。「親しい仲にも心づかいは必要」、というのが僕の考え方です。なにも、言いたいことをすべて飲みこめ、という話ではないのです。多少の〝会話テクニック〟で家族の雰囲気が良くなり、互いの自己肯定感が上がるのなら、それもいいのではないか、という提案です。その〝テクニック〟は、〝思いやり〟という言葉に変わりはしないでしょうか、という話です。

 

「イエス バット法」の談話はこれで終わりにします。手短にもう一つだけ。

「Blue あなたとわたしの本」の中でも何度か触れている(最後に関連作品のリンクも貼っておきます)、

「大切な人の大切なことを大切にしてあげてください」という主張です。

 ご夫婦のお話をうかがっていると、(ご主人にとって、〝この分野〟はとても大切なんだな)、(奥さまは〝この分野〟をとても大切にされているな)とわかります。何度か会っていると、わかる。 

 それが── 当人同士が、わかっていない。

 腹が立つほどわかっていない。何十年 いっしょに暮らしとんねん、と情けなくなったりもします。

 あなたのご主人は〝そこ〟を大切にしてほしいんですよ。あなたの奥さまは〝それ〟を大切なんだってわかってほしいんですよ。 相手にもいっしょに、〝それ〟を大切にしてほしい。大切なんだな、って気づいてほしい── けっこう切実な願いなんです。

 それをわかってもらえないから喧嘩になるんです。怒っているんじゃないんです。悲しいんですよ。わかってもらえないことが── 。「その分野は大切なんだな」って相手に気づいてもらえないことが。なんでなんだ、って泣きたくもなるんです。その人のアイデンティティーにも関わることなんです その分野が。その(デリケートな)部分・領域を、茶化すのもダメです。「この人にとって、これは、すごく大切なことなんだ」と理解し、〝神聖な領域〟として接してあげてください。そして出来ることならば、あなたも本心からその分野に興味を持ってあげてください。大切に扱ってあげてほしいのです。尊重してあげてほしい。その情熱の傾け方を、尊敬してあげてほしいのです。

 たったこの二つだけで、夫婦仲・カップル仲は見違えるほど良くなると僕は信じています。誰だって無下に意見を否定されて、自尊心を傷つけられたくはないのです。誰だって、自分にとって大切な分野・領域を大切にしてほしいのです。大切なその人に、こそ。

「イエス バット法」は練習もしてくださいね。なんだって練習がいるのです。

 

  まとめのようなものを。

 

 ◯ 営業シーンではもう古いとされる「イエス・バット(yes but)法」も、ご夫婦・カップル間ではまだまだ効力を発揮する。

 相手の発言を、「たしかにそうだね(yes)」といったん肯定し、そのあとに、「でもこうも考えられないかな?(but)」と自分の言いたいことを伝える。そうすることによって── いちど理解を示されているから── のちに意見を返されても心理的に受け入れやすく、喧嘩になりにくい。

 さらに付け加えるならば、どうしても告げ知らせたいほどの意見がないときは、「たしかにそうだね(yes)」で終わっておこう。「ほんとそうだね。わかるよ(yes )」と。パートナーが機嫌よくしゃべってくれることほど、嬉しいことはないはず。

 

◯ 大切な人の大切なことを大切にしてあげましょう。まずはその分野、〝神聖な領域〟に気づいてあげましょう。「この人にとって、このことは、とても大切なんだ」と。そして本心から大切に思ってあげよう。このことは彼・彼女にとって、アイデンティティーに関わるほどのことなのだ、と。 茶化したりするのも、御法度。 

 

 

 70億分の1の確率で、いまあなたのとなりに、その人がいてくださっています。掛け替えのないパートナーなのです。あなたはその人を選び、その人はあなたを選んだのです。大切にしてあげてください。どこまでも愛おしく思ってあげてください。その人を肯定してください。その人の自尊心を上げてあげてください。自信をつけさせてあげてください。その人の大切なことを、大切にしてあげてください。

 あなたとあなたの愛する人のあいだに 敬いの気持ちと笑顔が溢れますように。心からそう願っています。

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 文芸誌「Faith」発行者、吉永敦子さんのメッセージを追加しました。

 

 

 








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