「PERFECT DAYS」の Blu-ray が出たからじっくりと観直してみた。vol.3

Blue あなたとわたしの本 262 (「パーフェクト デイズ」感想)

 

 

この日も、いつもとまったく同じ朝のルーティンが映されます。ガラケー、財布、フィルムカメラ、車のキー、小銭、と順番に取っていくのも同じです。腕時計は、この日も棚に残されたままです。アパート前の自動販売機。ここで買われるのも、いつもと同じBOSSのカフェオレ。

トイレを清掃する平山。木漏れ日にも時おり目を向けます。

若い同僚のタカシが思いを寄せている(キャバクラ嬢らしい)アヤが来る。ミニバイクにアヤを乗せ、タカシはどこかへ行こうとするが、バイクの調子が悪い。タカシは、車を貸してくれと平山にせがむ。平山はしぶるが、アヤが立ち去りそうになるのを見、貸すことにする。平山は口かずは少ないが、思いやり深い性格であることがわかる。アヤを見ている平山の横顔のショットから、すでに三人で車に乗っている画面へジャンプする。スピーディーな編集がまたいいですね。

車中のタカシが、アヤに説明するかたちで平山の人となりを語る。「メチャクチャ仕事できるけどメチャ無口」「メチャ道具とか自分で作ってる」。じゃっかん〝説明ゼリフ〟かなぁ、とも Blu-ray で見返していて思ったのですが、この状況だと現実・リアルでもこうなるかもなぁ、と考え直しました。じっさい映画館で観たときは、平山が道具まで作っていることをどうして自分は認識したんだっけ? と家に帰ってから思い返してみたのですが、わかりませんでした。タカシのセリフのなかにあったんですね。一場面のなかに溶けこんでいて、わざとらしくなかったということなのでしょう。

アヤは、平山の持っているカセットテープを聴きたがります。「カセットの音、好きかも」とアヤが言うと、平山がうれしそうな目顔になるんですよね。目の表情だけで感情をあらわす演技。相手のセリフを(それも初めて話されたものとして)聞いているから、瞬時にこういった表情に変わるのでしょう。言うなれば、〝錯覚する才能〟です。「すごいなぁ」とため息がもれましたよ。本当に魅力的な俳優さんだと思う。いや、演技のスキルだけではないですよ、この人は。人間的にも非常に高みにいるかただと思います。そういうことってわかりますよね。伝わります。

タカシは、オールディーズのカセットテープって売るといくらになるんでしょうと平山に問う。アナログはいま人気だから、と。値段だけでも調べにいこうとレコード店へ強引に平山を連れていく。テープは思った以上の高値で買い取ってもらえることがわかり、売ってしまおうとタカシは言う。金があればアヤちゃんの店にも行けるから、と。あきれるほどの身勝手さです。平山は、カセットは売らないと言う。ですが、財布からほとんど有り金のすべてを出します。タカシに貸してやります。こちらもありえないお人好しです。タカシと別れたすぐあとの車のなか、平山はけわしい顔になっているどころか、舌を出しておどけたりして笑っているんです。もちろん一人で、ですよ。ヘンな人だと思いますよ(笑)。このあたりにはさすがの僕も親近感をおぼえません(笑)。でも、愛さずにはいられない。車中で、もしいかっていたら、「そりゃそうだよな」とは思うでしょうが、平山への興味は薄れたかもしれません。無口で、思いやりもあり、理解不能な面も持っている。おもしろいキャラクターを生み出したものだなぁと、思いますね。

ちなみに、この下北沢のレコードショップに、ヴェンダース監督もカメオ出演しています。お顔は知っていたので、劇場での鑑賞時にも気づけました。横顔でしたけどね。あなたはお気づきになりましたか。

平山は、この夜はいつもの浅草の地下街にも行けず、家にあったカップラーメンで夕食をすませます。タカシに有り金をわたしてしまいましたからね。寝床でフォークナーの「野生の棕櫚」のつづきを読みます。

 

ここから先の、映画の後半部分については、劇場で観たときに書いた感想記事、「『PERFECT DAYS』を観てきた。頭から離れなくなる映画だった」とかなり重複しますので、前記事で割愛したいくつかの事柄を中心に語りたいと思います。田中 泯さん演じる〝踊るホームレス〟についての考察とか。

 

 vol.4 につづきます。またご来訪ください。

 

 

 

 

 劇場で観たときの感想はこちら。↑

 

 

btomotomo.hatenablog.com

 

 








にほんブログ村 ポエムブログ 写真詩へ
にほんブログ村




写真詩ランキング






「Blue あなたとわたしの本」は毎日更新から不定期更新に切り替わりました。読者登録をご検討いただければ幸いです。ブックマーク、ツイッター、フェイスブック等でのシェアも大歓迎です。いつもありがとうございます。