とりこになるほど何かに惚れ込み、失神するほど誰かの影響を受ければいい

Blue あなたとわたしの本 259

 

 

「彼は◯◯の影響を受けている。モノマネだ」

「彼女は◯◯に憧れすぎてる。作品がそっくりだ」

こういった発言をここのところ続けて聞く機会があり、考え込んでしまいました。これらの発言はもちろん否定的なニュアンスで語られたのです。

たしかに〝◯◯さん〟はひとりいれば充分なわけで、まちがった意見とも言えないでしょう。

だけどもさ、思うんだけどさ、だれの影響も受けないで、ポコポコ作品を創り出せる人って、いるんでしょうかね? もしいたとしてもその段階の作品って、きわめてレベルの低いものなんじゃないかって気もします。

だれかの影響を受けるってことは、その人の創り出したものを「素晴らしいなぁ」って思えたわけでしょ。その作品の優れた点を理解できたわけですよ。それってすごく喜ばしいことだと僕は思います。ましてやある程度 似せられたのだとしたら、あきらかに才能がありますよ。

たとえばだけど、

「彼女はトルストイの影響を受けてる。作品がそっくりだ」って言われたとしたら、

とんでもねぇ 才能じゃねーか!」ってビビりますよね。

どんな分野であれ、プロの作品に似せられたのだとしたらそれだけで大したものです。

影響を受ければいいんですよ。何かに惚れ込めばいいんです。メロメロになればいい。とりこになればいいんです。その人やその人の創り出したものを、死ぬほど好きになればいいと思う。取り憑かれるほどに。 その作品の素晴らしさを、あなたは理解できたんだから。喜ばしいことです。

僕が子どものころ住んでいた地域では、「あの人、◯◯にカンカンや」と揶揄する人間がけっこういました。カンカン、というのは「バカみたいに何かに熱中している」といったような あざ笑うニュアンスです。辞書にも載っていませんから、その地域だけの隠語だったのかもしれません。

僕はその物言いが大嫌いでした。何かに〝カンカン〟になることはステキなことだと子ども心に思っていたのです。からかう人たちの気持ちの奥には、うらやましさもひそんでいたのだと思います。そこまで熱中するものが何もない自分がさびしかったのでしょう、自覚はなかったでしょうが。

作品やクリエイターに心酔する経験がないまま一生を終える人って意外と多いんじゃないかなぁ。べつに悪いことではないのかもしれないけど、夢中になるものがある・多い人生のほうが、毎日が輝くんじゃないかと、個人的には思います。

何かに〝シビれる〟ってことは、受け手側にもそれ相当のセンスが必要です。鋭敏な感性が必要。そういったものが備わっていた証拠なわけですから、喜ばしいことなのだと、ほんと思うよ。


ここまで書いてきて、「守・破・離(しゅ・は・り)」という言葉を思い出しました。元もとは茶道や武道の言葉のようですね。僕は芸道全般の格言だと捉えていました。

すなわち、

」では師匠の教えを守り、

」でその教えを破り、自らのスタイルを模索する。

」では師匠の教えも離れ、独自の世界を確立する。

といった感じでしょうか。

師匠の教えを──影響を受けた作品や人を──完全に「離」れる必要もないと自分としては思います。惚れ込んでいる作品はきっと一つではないはずですから、混ざり合うはずなんです。混ざり合えばいいんですよ。そこにあなた固有の人生経験も加味されていく。あなた独自の持ち味が加えられる。

モノマネで終わるわけがないんですよね。それらの組み合わせはあなた独特の、ものすごくユニークなもの。世界のどこにもないものです。

だから安心して、たくさんの作品や作者に惚れ込んでください。影響を受けてください。モノマネの期間があっても大丈夫。とことんマネしてください。センスに恵まれているあなただから、マネしている過程で、お手本にした人の凄さにもますます気づくはず。それが大事です。 気づける、ってことが。

あなたは正しい道を歩んでいます。そう遠くない先に、いまだかつてどこにもなかったあなただけの〝オリジナル〟が、待ってる

「モノマネだ」と叱責されていた若いアーティストたちとまた逢う機会があったので、上記のようなことを伝えました。「僕の考えだけど──」と前置きをして。 ホッ、としたような彼らの笑顔が印象的でした。若いって、まぶしいです。それと同時に歳を重ねることもステキなこと。 物を創るって、いいね。

 

さあって、雨も上がったようだし、僕も今日は街に出かけることにするかな。映画を一本観て、大型書店と古本屋をはしごして、タワーレコードにも寄るか。何冊かは本を買うだろうから、それを持って居心地のいい深夜喫茶で夕食をとって、コーヒーもいただき、帰ってくることにしよう。

どうしてそんなことをしに行くのかって? 決まってるじゃないですか。

とりこになるほど惚れ込み、失神するほど影響を受ける、〝新たな作品や創作者〟に出逢うことを期待して、 さ! 

 

 

 

btomotomo.hatenablog.com

 

 








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