映画「PERFECT DAYS」、3回目を観て想うこと ──人間にとっての〝成功〟とは何か? vol.2

Blue あなたとわたしの本 270



  淡々とした日常に宿る〝幸せ〟


休日の平山も楽しそうなんですよね。コインランドリーに行ったり、好きな音楽をかけながら部屋を掃除したり、自分で撮った写真を選別したり、じつに楽しそうに見えます。

古本屋に立ち寄れること、読書ができること、行きつけの小料理屋でのたわいもない会話──こうした淡々とした日常を、楽しめるか楽しめないかなんだろうなぁと、改めて思います。とかく見過ごしがちな──しかし確かな──幸せのワンシーンです。

  妹・ケイコと平山、つながっていない それぞれの世界


妹のケイコが、「ほんとにトイレ掃除してんの?」と聞き、 平山が認めたとき、ケイコは驚きと哀れみが入り混じったような表情を浮かべます。妹の価値観、彼女の世界ではそうなのです。惨めな姿に映るのでしょう。

平山が、姪っ子のニコに言っていたように、「この世界には、たくさんの世界がある」のです。 つながっているように見えても、つながっていない世界が。 他者から見てどう見えようが、たとえ惨めに見えようが、 本人が自身の日常をどう思い、どう感じているかは、本人にしかわかりません。この世界には人の数だけたくさんの価値観があり、幸せの定義があり、成功の定義づけもまた、人それぞれであるはずです。

  命令口調に垣間見える 平山の過去

タカシが突然仕事を辞めた日、平山はタカシの分のシフトもこなします。 その夜、事務所に電話をかけるのですが、そのセリフ──「 あのさぁ、これ毎日は無理だからね。誰でもいいから寄こして、いいね!」、その言い方が、とくに最後の「いいね!」の言い方が、 けっこう慣れているんですよね(笑)。 つまり、昔はこういった命令口調で人に接していた時代があったんだろうなと想像できます。高い役職につき、人を使う立場だったのだろうな、と。つなぎの作業着ではなくスーツを着、高級車に乗り、立派な家にも住んでいたのでしょう。そのころの兄を知っているがゆえに、「ほんとにトイレ掃除してんの?」という言葉が、妹の口から出てきた──。

だとすれば、世間一般的には、平山は落ちぶれた人間、ということになるのでしょう。成功から転がり落ちた人間、ということに。この映画は、観るものの閾下(いきか)に、たえずある問いかけを投げかけます。──〝人間にとっての成功とは何か?〟 〝人間にとっての幸福とは何か?〟と。

  「わかんないことだらけ」の人生、 〝謎〟のなかを泳ぐ私たち

映画の後半、 小料理屋のママの元夫がこんなことをつぶやきます。この男の余命は、そう長くはないようです。「 わかんないことだらけだなぁ。 けっきょく何もわからないまま、終わっちゃうんだなぁ」。──これもほんとにそうですよね。 けっきょく何もわからないまま、我われは人生を終えてしまいます。 つながっていない、それぞれの世界を生きて。ここから、去っていく。

私たちは〝謎〟のなかを生きています。〝謎〟のなかを泳ぎ、自分は成功しただの、成功できなかっただの、あの人はどうだのこうだのと水面を叩いて水しぶきを撒き散らし、わずか数十年の月日を生き、あっという間にこの世界から消えていきます。

──何もわからないまま。わかんないことだらけのまま。そういう意味では、すべての人は敗北する、とも言えるのかもしれません。この〝世界〟に限定したならば、です。

では、 本当の意味で、 人間にとっての〝成功〟とは何なのでしょうか。そういったものが果たしてあるのでしょうか。もっと、時空をつらぬいたような、根元的な〝成功〟が。

映画「PERFECT DAYS」は、タチが悪いサブリミナルカットのように、観る者の心の奥深くへと、この無音の問いを 挿しこみ続けるのです。

 

 vol.3 人間にとっての成功とは〝人に喜ばれる存在となること〟 へ つづく

 

 

映画「PERFECT DAYS」、3回目を観て想うこと ──人間にとっての〝成功〟とは何か? vol.1

 

 映画「PERFECT DAYS」、3回目を観て想うこと ──人間にとっての〝成功〟とは何か? vol.3
 人間にとっての成功とは〝人に喜ばれる存在となること〟

 

映画「PERFECT DAYS」、3回目を観て想うこと ──人間にとっての〝成功〟とは何か? vol.4〈完結〉
この世のものではない「PERFECT DAYS」

 

 

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