Blue あなたとわたしの本 223
なぜ、人とうまく話せないのでしょう?
僕も含め、
ほとんどの人が陥っていると思われる
ある過ち、
あるいは勘違い、が
原因なんじゃないかという今回の話。
「Blue〜」はたいてい結論から入るので、
今回も結論に近いところからいきましょうか。つまり、
人とうまくコミュニケーションが取れないのは、
うまく話さなければ、と思いすぎるからですよ。
あるいは、「よく思われなければ」とかね。
あわよくば、「頭のいい人だと思われたい」とか。
「ユーモアセンス抜群の人だと思わしたい」とか。
下手したら、
「尊敬されたい」とかね。
誰が尊敬てなもんしますかいな。
ちょっとやそっとじゃ他人てなもんを尊敬しません、人間は。
あなたは今日、出会った人を何人くらい尊敬しましたか?
一人もいなかった、と答えられても大して珍しいことじゃないと思う。
ロクでもない人間とは出会った、と誰かが答えられ、「私もだ!」と隣にいた人が強く頷いたとしても、特別奇異なこととはあなたも思わないんじゃないかなぁ。
喜ばしいことではないんだろうけど── まぁ、そういうものだよね。
だからさ、
つまりさ、
「話が上手いなぁ。頭がいいんだなぁ。尊敬しちゃうなぁ」なんて思われることは、まず、ないにも関わらず、多くの人がそこを目指してしまうわけさ。
無謀も無謀。勝算、ほとんどゼロ。何をしとんねん、という話です。
でも今回のタイトルは、
「『人とうまく話せるようになる ささやかだけれど強力な方法』ってなってるじゃん」とあなたは言われるかもしれません。だから読みに来たのに、と。
はい。「来てよかったわ」と思ってもらえるよう、話を続けます。
うまく話さなければ、と思いすぎるから、過剰な力が入ってうまく話せないわけですから、
うまく話そうと思わなければいいんです。
「でも誰だってよく思われたいさ。だからうまく喋りたいとどうしても思っちゃうじゃないか」
そうですね。まだ続きがあります。だから、
喋らなければいいんです。
自分は話さなくてもいい、とまず思ってみてください。
あなたやわたしのように自意識の強い人間にとって、それがどれほど気持ちを楽にするか。ちょっと1分間だけ、考えてみてください。
じゃあ、何をするかです。
「コミュニケーションが成立しないじゃないか」って?
いえ、コミュニケーションはここから始まるんです。つまり、話すのではなく、
相手の話を聴く、んです。
〝本当に〟聴くの。
相手の話を〝本当に〟聴こうとする人間は多くはないのです。
聴いているようでいて聴いていない今までのようなレベルの聞き方ではなく、
(わたしの取って置きのあのエピソードをいつ披露してやろうか)なんて頭の半分でタイミングを計ってるそんな聞き方でもなく、
〝本当に〟聴くんです。
聴くことだけに意識を集中してみてください。
聴くことだけに意識を集中してください。
聴くことだけに意識を集中していいんだと自分に許す感覚です。
自分にそう許してから会合に臨むの。
「でも人の話を本当に聴くのは大変でしょう?」って。
確かに。
でもね── 試してみられればわかりますが── あなたやわたしのようなタイプの人間にとって、
聴くことだけに意識を集中していいんだと自分に許すと、
ものすごく楽になりますよ。
自意識から解放されるんです。
聴くことだけに集中していればいいのですから。
そしてね、聴くことだけに集中していると、
当然、相手の話がよく入ってきます。よく聴き取れます。相手の話がスラスラ理解できる、じゃないですよ。なぜならほとんどの人の話は整理されていませんから。自分だけわかっていることを人もわかった前提で話していたりとかね。わかりにくいことが多いです。
非常にわかりにくい話し方だなぁということが── わかってきます。だから自然と質問が浮かびます。それってこういうことですか? みたいなね。すると相手もまた応えます。たいていはさらに熱を込めて。あなたはいわゆる〝テクニック〟として質問をしているわけではなく、本当に聴き、本当に確認しておきたいことが思い浮かび、質問したわけです。相手にもそれが伝わり、そのご、いっそう熱心に話してくれるのが普通です。
大切なことは、〝本当に〟聴くこと。
誠実に聴くことです。
この行為には、ちょっとした魔法さえあるように感じます。
相手が乗ってこられるだけではなく──
それだけではなく──
あなたも落ち着いてきます。
あなたの気持ちが落ち着いてくるんです。
まるで自分の家に招き、自室で会合を行なっているような気持ちになってくることもあるかもしれません。
今度は自分が話すタイミングだな、というのも自然とわかります。
気持ちはすでに落ち着いていますから、あとはあなたが思うことを穏やかに伝えればいいのです。素直に話せばいいのです。
誠実に聴いてくれた、という感触を相手が持ち、場の雰囲気も良くなっていますから、会話のキャッチボールはスムーズに運ぶことでしょう。
つまり、
「人とうまく話せるようになる ささやかだけれど強力な方法」
とは──
逆説的ですが──
対話相手の話を、〝本当に〟聴く、ということ。
まとめてみます。
◯ 人と対話をするとき── 必要最低限のこと以外── 私は喋らなくてもいい、と自分に許してから会合に臨む。
◯ そして、〝本当に〟聴く、ことに意識を集中する。
◯ 疑問点が浮かんだら、穏やかな口調で、素直に質問する。
◯ 話す番が回ってきても、すでに場の雰囲気が良くなっているので、落ち着いて話すことができる。
◯ 「うまく喋らなければ!」が最初に来てしまうと、一人称の視点だけを持って対話に臨むようなもので、力みすぎになりやすく→ 相手の話も耳に入らず→ 場の空気も悪くなり→ 結果、ますますぎくしゃくした喋りになる。当然、会話も弾まない。
単純な構図なのですが、このことに人は気づきにくいように思います。僕もなかなか気づけませんでした。
ピン、と来たかただけで結構です。
できればもう一度、冒頭から読み返してみてください。
ささやかかもしれないけれど、
いえ、ひょっとしたらけっこう大きく、
明日からのあなたの日常の景色が、
変わるかもしれませんよ。
わたしがそうであったように、ね。