エッセイ Blue 26
ほんと、掃除ほどお得なことはないと思います。掃除はめんどくさいですって? そうですねぇ。じゃあ、そんなあなたは、
「掃除ほどお得なことはない」
このアファーメーションを唱えるところから始めましょうか。
一日10回、3日も唱えれば、お得なことが大好きなあなたですから、「ほんとにお得なの? お得なんだったらやっちゃおうかな?」って気持ちになってきます。
何ごとも己の敵は己です。「己」が邪魔をしとんねん。己を制する者は世界を制します。
これだけがんばってるのにどうしていまひとつうまくいかないんだろう? って人がもしいらっしゃったら、それは掃除が足りないからかもしれませんよ。いつも気持ちが沈みがちな人もそうかもしれません。『夢をかなえる「そうじ力」』の著者、桝田光洋さんの言葉にこんなのがあります。「部屋が汚い人は不幸感覚が強く、部屋のキレイな人は幸福感が強い」。これ、アルと思いません? 幸福とは何か、と考えるとムズカしくなっちゃいますが、幸福とは部屋がキレイなこと、と定義すればずっこけるほどアッサリします。誰でもできますものね。
そうです。掃除をすれば、
① 開運する。
開運しちゃうんです。摩訶不思議な力でというよりも(それもあるかもしれません)、自分の気分がよくなるから、運気にも乗れる感じです。トイレ掃除をしたら金運がつくって言うじゃないですか? あれなんかも、トイレに行くたびにいい気分でいられるから、さらなるいい気分になる出来事を引き寄せる、というのはあると思いますよ。
掃除をするメリットはまだあり、
② 自信がつく。
自信がつきます。毎日、掃除をするだけで自信が増していきます。性格も前向きになってきます。気がふさぐのは単に生活空間が汚いから、というパターンは実に多いのです。自分の気分に敏感になり、気持ちを上向けることをたくさんしてください。ゴミ箱の中が見えると微妙に気が滅入ることに気づき、先日、三つあったのを処分し、蓋つきの大きめのを一つ買いました。事足りています。スッキリしました。
③ 新しいものが入ってくる。
不必要なものを捨てると新しいものが入ってきます。このことを『You were Born Rich』の著者 ボブ・プロクターさんは「空白の法則」と呼んでいます。望むものを手に入れるためには、そのためのスペースが必要なのです。例えば新しい服が欲しいのであれば、不必要な服を手放さなければなりません。「自然は空白を嫌う」ため、ほどなくお気に入りの服がクローゼットに並ぶのだそうです。プロクターさんは言います。「その古いカーテンを外せば、そこに新しいカーテンのためのスペースが生まれるわけだよ」と。
まず捨てる。スペースを作る。すると新しいものが入ってくる。物に、「ありがとうございました」と手を合わせ、今までいっしょにいてくれたことを感謝し、処分するように僕はしています。
④ 悩みごとから解放される。
掃除をしていると無心になれます。悩みを忘れます。思考が止まる感覚も掴めます。その快感がわかります。すると、思考したいときにだけ(意識的に)思考しようとするようになります。頭の中のおしゃべりを聞き流すことも覚えます。こうなると、思考と自らを同一視していない境地です。思考を使う側・思考の主人という本来の立ち位置に、戻ることができるのです。
⑤ 健康診断の数値が良くなる。
血液検査などの数値がよくなります。メタボ判定などにも引っかからなくなるでしょう。つまり運動になるということです。掃除は思いのほか体を動かします。汗もかきます。終わったら部屋はキレイでさわやか。「確かにこんなお得なことはないかもしれないなぁ」という気がしてきたでしょう? 「ムズカしげな境地に至るだけではなく、健康診断の数値までもよくなるのか」と。
そうです。ムズカしげなことばかりではありません。掃除をしますと、
⑥ 美男美女になる。
当然、美男美女になってきます。体もシェイプされます。いつもいい気分でいるから顔つきも明るくなってきます。そうなるともちろん、
⑦ モテる。
モテます。掻き分けるようにモテます。面倒ではあるでしょうが、掻き分けながら前へ進んでください。腕の筋トレにもなります。
細かなところでは、
⑧ CD が聴き通せる。
車を運転される方は聴き通せるかもしれませんが、椅子に座って1枚を聴き通すのはなかなかに大変です。少し念入りに掃除をすれば1時間はすぐ経ちます。「あぁ、このアルバムはこういう構成だったのか」と何度も僕は頷きました。曲順の意図がわかったり、新たな感動を覚えたり。掃除さまさまです。どこまでお得やねん、と思います。
まだあります。
⑨ 家族仲が良くなる。
相性が悪かったのではないのです。単に家の中が汚くて、みんなイライラしとったんです。「よりいい関係でいたいから、みんなで掃除を心がけよう」とあなたから言ってみてください。『人生がうまくいく習慣力』の今村 暁さんは、「お父さんは窓を一枚拭くだけ、お母さんはシンクをさっと流すだけ、お子さんは廊下をひと掃きするだけ」でもよいと言われています。「すぐに終わる掃除でないと、毎日続けることはできない」と。その通りだと思います。今村さんはこのことを「マイクロゴール」と呼んでいます。小さな行動から始め、そのつど達成感を味わうというものです。そして少しずつハードルを上げていく。「掃除ができる親を子どもは尊敬する」というフレーズも著書の中にあり、印象に残りました。やはり全ての基本は掃除のような気がします。
家の掃除も一通り終わってしまえば、毎日の清掃は短時間で終わります。僕が1時間前後やるときは、CDを聴き通すためや運動のためなど、楽しみのためにやっているのです。何ごとも「楽しい」と結びつけるのが僕のやり方です。音楽だけではなく、小説の朗読CDや落語を聴きながらやるのもいいですね。
最後にもう一つだけ。
⑩ 仕事がはかどる。
ご自宅であれ、オフィスであれ、引き出しやキャビネット(あるいはパソコンの中)が整理されていないと「あれはどこにしまったっけなぁ?」が増えるんですよ。ビジネスマンは年間平均150時間も探し物をしているそうです。探しているうちに機嫌も悪くなってきます。機嫌が悪くなるとまた機嫌が悪くなるような事態を引き寄せます。机の上はもちろん、仕事場は常にスッキリとさせておきたいものです。
松下幸之助さんの言葉に、「自分の身の回りを掃除できないものが、どうして天下国家を掃除する仕事ができようか」というのがあります。ハッとする言葉ではないでしょうか。
仕事の合間に2、3分掃除機をかけると、かえって疲れが取れるのを僕は覚えます。適度に体を動かすからなのでしょう。
最近、充電式の掃除機も買いました。これによってさらに気楽に掃除を行えるようになりました。念入りにやりたいときはコンセントに繋ぐタイプ、数分で済ませたいときは軽量の立て掛け式、と使い分けています。
「掃除のお得」まだまだたくさんあると思います。ブックマークコメントでもコメント欄でもけっこうですので、ご存知の方はぜひお教えください。みんなの役に立つはずです。
ずっと昔の夏の午後、ある禅寺の老僧に、「仏教でいちばん大切なこととはなんですか?」と尋ねたことがあります。そんな質問をすること自体、失礼だったと今ではわかるのですが、頭でっかちな若者だったのです。そして青年は、返ってきた答にもがっかりしました。もっと深遠な(と青年にとって思える)返答を聞きたかったのでしょう。
老僧は穏やかに微笑み、こう答えられました。
「掃除です」 と。