Blue あなたとわたしの本 193
妻と作る
僕の妻はバンドを組んで歌っている。オリジナルをやる。曲はギタ
だから妻が死んでしまったとき、僕は生きていく気力を失ってしまった。雑文書きの仕事もみな断った。音楽仲間との関係も断った。一日中ベッドに潜り込んでいた。際限もなく僕は眠りつづけた。
ちょうど半年が過ぎたころだ。突然、僕の頭のなかに奇抜でカラフルなイメージが舞い降りてきた。なんだこれはと思った。イマジネーションは止まらなかった。一つひとつが青や黄色や緑の光を放っていた。それはひどく愛おしい、懐かしいものだった。僕は布団を蹴って跳ね起きた。パソコンに向かった。イメージに形を与えた。言葉にした。出来上がったものを読んでみた。あぁ、と思った。これは、と気づいた。僕は机の引き出しの奥から携帯電話を取り出し、半年ぶりに音楽仲間へメールを打った。また、書かせてもらえないか、と。
奇抜でカラフルなイメージはいまも来つづけている。新しく入った女性ヴォーカルがその歌詞を歌っている。いろいろな歌手がカヴァーもしてくれる。だけど僕の耳の奥では妻の個性的な声が歌っている。
僕たちふたりで作る、僕たちふたりの歌を。