エッセイ Blue 17
永かった冬も、ようやく終わりに近づいてきたようですね。まだまだ油断はなりませんが。
僕は── 皆さんもご存知だとは思いますけど── 聞きしにまさる寒がりじゃないですか? (知らんがな)
知らん方はこちらを読んでね (^o^)/
でもこの冬はね、心強い 味方 を購入したんですよ。10月の始めごろだったと思いますけど。高野のイズミヤで(そこも知らんがな)。
帽子、って言うのかなぁ。かぶりもの、って言うのかなぁ。一目見て「これだ!」と思ったんですよ。 これやんけ! と。あったかそうやんけ! って。
これなら頭も、顔の側面も、肝心かなめの首までもカバーしてくれるはずですからね。
まぁ 確かに── この〝耳〟は気になったんですけどね。まっ、いいかぁ、と。じゃまになるものでもなさそうだし。第一、この〝耳〟がなかったら何だかわからないでしょうしね。
── 写真を見てもらったほうが早いですね。これです。
あったかそうでしょう! 😂 実際、あったかいんですよ! 頭も、顔の側面も、首までもフォローしてくれました! フォローそのものです!
もうねぇ── 文字通り── ずう〜っと かぶっています。お風呂に入るとき以外はずう〜っと。
夜、寝るときもです。
眠るときは僕、耳栓をするじゃないですか? (知らんがな)
知らん方はこちらを読んでね (^o^)/
耳栓をして、このクマさんをかぶると、防音効果がさらにアップしたんです。これは嬉しい誤算でしたねぇ。どこまで優れとんねん、みたいな。
ほんとに買ってよかったですよ。もう皮膚と化すくらい着用しています。
ただね、そうなるとね、自分の皮膚を四六時中意識してる人がいないのと同じでね、〝忘れちゃうん〟ですよ。このクマさんをすっぽりかぶってることを。
僕は通販でわりと色々なものを買うんですけどね、小さいものから家具的なものまで。
それでピンポーン、ってインターホンが鳴るじゃないですか? 「はーい」って出ますよね。そのとき、何回もクマをかぶったまま出ちゃったんです。
ギョッ、とされてる配達の方を見て、やっと(クマのままじゃん)って思い至るという。でも、「いやぁ、すみませんね、こんなのかぶったまんまで」って頭を掻いて見せるのもなんだか面倒くさくってさぁ。クマのまま何事もないかのようにサインして、低い声で「ありがとうございます」って受け取ってたんですけどね。それがまたなんともいえずブキミらしくって、皆さんどこか逃げるように車へ戻られます。
ある日ですね、若い女性の方が持ってきてくださったんですよ、荷物を。
ピンポーン、って鳴って、「はーい」って出たんですけど、このときもクマのままだったんです。かつ、このときは小説を書いてる時期だったんですよ。『1パーセントの深い哀しみ』っていう。
上昇しつづけるエレベーターのなかで一人で暮らすことにする17歳の女の子の話なんですけどね。「引きこもり幻想小説」といった感じです、ジャンルで言えば。そんなおかしなジャンルがあったらの話ですけど。
その主人公の女の子は「いやぁ、エレベーターのなかは誰もいなくて快適だなぁ」みたいなキャラクターでね、人もいないんだから服を着る必要もないなぁ、みたいな感じで素っ裸で過ごすという──
おっさん、なにを考えとんねん!!
みたいな小説なんですよ。
〝ヘンタイ〟の方はぜひ読んでね (^o^)/
どこまで話しましたっけ?
そうそう、若い女性の方が荷物を持ってきてくださってですね、僕はそのけったいな小説世界にどっぷりと漬かっていますから── なんて言うか── この世の者ではない ような顔つきになっていたと思うんですよ。ちょうどあのあたりを書いてたときです。後半に出てくる、どこだかわからない例の浜辺。海から突き出た礼拝堂がこれから天へと まさに〝落下〟していこうかというあのあたり。── 読んだ人にしかわからない思いっきりマイノリティーな話をしてますけど。
そりゃあ、妖気ただようただならぬ目つき・顔つきだったと思いますよ。それに加えてクマのかぶりものでしょう?
僕がいま借りている家っていうのがね、50メートルくらい細長い私道を入って行って、突き当たりにある平屋なんですよ。大家さんは別の県に住んでて、家をいじっても何をしてもいいって言ってくれてるんで、存分にペンキを塗りたくった気がふれたような家なんです。
知らん方はこちらを読んでね (^o^)/
誰が見ても「自分でペンキを思いのままに塗りたくったんだね」っていう家なんです。玄関に辿りついた時点で、そんなのもう怖いじゃないですか?
僕は騒音に極端に弱いだけではなく、照明にも極端に弱いので、日中は電気をつけずに自然光で過ごしているんです。ええ、曇りの日なんかはかなり薄暗いですね。その日は曇りでした。
配達の女性から見たら、細長い私道を入って行ったら突き当たりにペンキを塗りたくった発狂したみたいな平屋があって、薄暗い家の奥からどこかこの世ならざる世界をさまよってるような顔つきをした細長い男がヌウっ、と出てきて、かつクマのかぶりものをしているわけですよ。怖いっちゅうねん。
女性ははっきりと、一歩 下がられました。たぶん、デヴィッド・リンチの映画にでも迷い込んだような気持ちになられたんじゃないかなぁ。
ダンボール箱を置いて、伝票をくださって、「こ、ここにサインを── 」と、か細い声で言われたんですけど、ふつう伝票といっしょに書く物もわたすじゃないですか? 気が動転されてるのか、紙だけだったんです。なので、「ちょっと待ってくださいね」と言って、ペンを取りに奥の部屋へ行こうとクルリ、と背なかを向けたんですけど、ここでまたハッ、と思い至ったんです。僕、背なかもゾクゾクしやすい体質なので、年間8カ月くらいはベストを羽織ってるんです。毛でできた半纏と言うのか、なんて言うのか──
これも写真を見てもらったほうが早いですね。背なかをクルリ、と向けたらこういう状態だったんです。
piyo piyo じゃねぇだろ、みたいな。
頭からすっぽりクマをかぶっててですね、背なか一面には生まれたてのヒヨコをしょってるわけですよ。
「ヒッ!」と女性が息を呑まれたのがはっきりとわかりました。
このあたりから、さすがに僕も可笑しくなってきてね、(怖がったはるし、かわいそうやし、なんか冗談言うたろ)と思ったんですよ。
ですがね──これまた僕の冗談、と言うのがですねぇ、友人・知人に「おまえの笑いはわかりにくいんじゃ!」としょっちゅう叱責を受けるほどわかりづらいものなんです。自分ではわかりにくい、なんて思っていませんよ。でもたしかに、いまもいろんなところで誤解と混乱を巻き起こしていることも事実なんです。笑いのセンスがありすぎるのか、なさすぎるのか、どちらかなんでしょうね。中間ではないような気がするなぁ。
それでですね、このときも「冗談言うたろ」って思って、わざと ユラ〜リ、と身をふり向かせたんです。ドロ〜ン、とした目つき・顔つきをオーバーに作って、こう、言ったんです。
「今宵の月は なお一層 青白いことでしょうねぇ」
なんやねん、それ!? みたいな。
俺でもわからんわ!! みたいな。
どこがどうトンボ返りを打ったら笑いに 着地するねん!? みたいな。
案の定、女性は笑うどころか、
ガタガタガタガタガタガタ──
震え出さはって、たしかに底冷えのする曇りの日ではあったんですけど、そこまで歯をガタつかせて震えなアカンほどの寒さでもなかったことは断言できます。だいたい僕は照明はつけないですけど、エアコンはトコ夏みたいに利かせてますからね。
結局その女性は、僕のサインした伝票を 2回 つかみ損ねたのち、細長い私有地を転がるように駆けて細長い男の前から去って行かれました。
車の発進のときも何度かエンストされてる音が、かすかに耳に届いていました。
女生徒さん、
あのときの女生徒さん、
女生徒さん、ちゃうわ!!
あのとき配達してくださった女性の方、いまこのブログをお読みでしたら、怖がらせてしまって本当に本当にごめんなさい!!
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クリックしねーよ!!
そもそも、
読んでねーよ!! 😂
引きこもりヘンタイ幻想小説の金字塔
100万人が涙した「エッセイ Blue」の原点