小説「世間さま」note で公開

エッセイ Blue 24

 

 

note.mu

 

 

 こんにちは。ほぼ月刊となってしまいました「Blue あなたとわたしの本」、責任者の智(とも)です。


「以前カクヨムにあった『世間さま』を再読しにいったら公開されていなかったのですが?」というお声を先日いただきました。ありがたいですねぇ、再読しようと思ってくださったことが。

 僕の小説は2回、3回と読んでくださる方がけっこういてくださるんですよ。これ、自慢です。だってこんな嬉しいことってないですものね。読んでもらうたびに新たな発見があるようにしたいとも思っています。でも2、3回読まないと面白さが伝わらないというのでは駄目です。1回目から楽しめるものでないと。2回目には2回目の、3回目には3回目の旨味がちゃんと下の層に敷かれている、というのが理想です。そうであるために、何度も何度も手を入れるわけです。(前回も少し触れましたが、第一稿は進むがままに進ませるべきだと僕は考えています。初稿から頭で計算してしまってはいけない、と)

 

 前回の投稿

 

 

 ご質問いただいた『世間さま』なんですけどね。そうですね。以前カクヨムで公開していました。『YES』と『記憶のたわむれ』も上がっていましたでしょう? それをブラッシュアップして連載したのが当サイト「Blue あなたとわたしの本」に入っている『YES』と『記憶〜』の決定稿です。その時にね、『世間さま』も連載しようと思ったんですよ。でも── 読まれた方はおわかりかと思いますが── かなり奇妙な話だし、明るいエンディングとも言えないんですよね、『世間さま』って。一週間もこの話で引っ張っていいのだろうか? と思いました。それで、「はてなブログ」に持ってくるのをやめたんです。『YES』と『記憶のたわむれ』も変な話だけど、あの二作はカタルシスがあるんじゃないかなぁ。

 ご質問いただいた方にその旨をお伝えしました。「じゃあ、note で公開したらどうですか?」と逆に提案してくださった。買いますよ、と。「奇妙で、かつ明るくもない話だと公言して、それでも読みたいって言えばそれは読者の勝手だし、自由じゃないですか」とも言ってくださった。その通りだと思いました。

 note には『1パーセントの深い哀しみ』と『海を見上げる、その暗く温かな場所で』という小説がアップされているのですが(その方はこの二作も読んでくださっていました)、これらも奇妙な話なんですよ。「こうなったら note にはけったいな作品を集めるか!」と思いました。それも面白いな、と。

 そういうわけで、『世間さま』のブラッシュアップ版を、 note で公開いたしました。「不思議な話は好きだよ」と言われる方にはお勧めしたいですね。いちどカクヨムで読まれた方も、よろしければ、もう一度。

『1パーセントの深い哀しみ』と『海を見上げる、その暗く温かな場所で』もよく購入していただいています。僕もまた頭から読み返し、文章をチェックしておきたいなと思っていたので、この機会に二作とも手を入れました。まだお読みでない方は、こちらのほうも、ぜひ。

 

「1パーセントの深い哀しみ」にいただいたユーザーレビュー集

 

 

 前回、告知いたしました新作『黙想館の夜』も絶賛執筆中です(誰が絶賛しているかと言うと、もちろん私が絶賛しているのです)。少し長い作品になりそうな予感もあり、まだまだ時間はかかりますが、お待ちいただければ幸いです。

 

 
 それでは『世間さま』の冒頭部分です。note でこの先もまだ無料でお読みいただけます。

 

 今日も来てくださって、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

 

 

 作家志望の夫。それを支える妻。二人だけの家に、平べったい箱のような生き物「世間さま」がいつしか住みつくようになった。
 夫婦に何が起こったのか? 
「世間さま」とは何者なのか?

〝ある瞬間〟を小説化した、哀切の幻想譚。

 

 

 

   

 世間さま 

 

「世間さま」がいつごろからわたしたちの家に住みつくようになったのか、わたしはよく思い出せない。

 もうずいぶん前からのような気もするし、まだほんの最近みたいにも思える。気がついたときには「世間さま」がちゃぶ台についていたし、さんまやら豆腐やらをいっしょに食べていた。カレーライスなんかも。朝は主人と同じようにコーン・フレークに牛乳をかけて食べているらしい。「世間さま」は出されたものを、おとなしく食べる。

「世間さま」の形状はすこし変わっている。

 たけは40センチほどで、横幅はそれよりほんのわずかに短い。厚みは15センチくらい。その平べったい箱のようなからだに顔がついている。からだ全体が顔なのだ。目はゆで卵を横にしたようなかたちで、黒目がすごく大きい。紺色のビー玉がはまっているみたいだ。口の両わきはつねに持ち上がっているので笑っているふうに見えるが、V字形というのでもない。カモメが空をゆったり飛んでいるような格好と言ったらいいか──だから見ようによっては困っているふうにも、悲しんでいるふうにも見える。でもやっぱり、笑っているみたいだけど。

 ふだんは手足もなく、その場にじっとしていることが多い。座椅子に寄りかかっていたり、押し入れの二段目に乗っかっていたり、物干し場で陽を浴び、目を細めていたりもする。歩いたり、ご飯を食べたりするときにだけ、からだのなかから手足が出てくるのだ。にゅっ、と。とてもむっくりとした手足が。

「世間さま」はおとなしいからいいなぁ、と主人は喉仏のあたりをさすりながら微笑む。夫は騒々しいことが大の苦手なのだ。だから友だちさえつくらない。携帯電話も持っていない。「世間さま」がいることすら、ぼくは時どき忘れてしまうよ──。

「世間さま」はたしかに物静かだった。箪笥たんすと壁の隙間にもぐりこむのが好きらしく、横向きになって何時間も挟まったままでいたりもする。そうなるとこちらからは目も口も隠れてしまうので白い箱となんら変わらない。家の柱やはりに登りたいのかただ眺めているだけなのか、やけに熱心に見上げていたりすることもある。お風呂は嫌いらしく、入れてみようかとこちらがと考えただけで一目散に逃げていく。いちど主人と無理やり湯船につけてみたら、いやにからだがふくれてきたのでびっくりして拾いあげた。しばらくは真っ赤になったまま板の間でのびていた。「世間さま」は、ほんとうに面白い。

 

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小説「世間さま」

 

 

小説「1パーセントの深い哀しみ」

 

 

小説「海を見上げる、その暗く温かな場所で」

 

 

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