「係り受け」はここまで簡単になる! 僕が使っている推敲技術

エッセイ Blue 22

 

 

 僕は文章を書くのが好きです。それを知ってる友人がね、書きかけの書類を持って家に来ることがあるんです。

「文章を書く必要があって いま推敲してるんだけど、ちょっとまだ分かりづらいんだよな」とか言って。「どこがどう分かりづらいのかは分からないんだけど まだ分かりづらいということだけは分かる」と、非常に分かりづらいことを口にしながら家のなかへ上がってくるわけです。

 僕は文章を推敲するのだけが趣味という変質者みたいな男じゃないですか? 態度では「めんどくせえなぁ」みたいなポーズを装うんですけど、差し出された書面を手にしてどこか舌舐めずりしてる自分がいるわけです。どないやねん、と自分でも思うんですけど。まぁ── ヘンタイとはそういうもんなんでしょうね。どないもこないもならんという。

 ちなみに、「ちょっと見てくんない?」とか言いながら上がり込んでくるヤカラに限って手土産みたいなものは一切 持ってこないんですよね。なんなんでしょうね、あれって。

 まぁ、そういうわけでその「分かりづらい」文章を読ませてもらうとね、なにが分かりづらいって、やっぱり〈係り受け〉なんですよ。係り受けの語順が分かりにくくしているんです。

出た! 係り受け!」と友人はなぜか両腕を広げます。おまえは舞台役者かと思いましたよ。会社員なんですけど。

「係り受け、ってアレだろ?」と顔を近づけてきて今度は指を1本立てます。「この修飾語がこの被修飾語にかかって、この修飾語がまたまたこの被修飾語にかかり── って矢印に次ぐ矢印が例文の横に引きまくってあるアレだろ?」

 ソレだよ。

「アレ見るとさぁ『ヤダヤダ 教科書みたーい!』って俺、叫んじゃうんだよ。思い出しただけでヤダわぁ」

 気持ちは分かる。

 そういう人、たしかに多いと思いますよ。友人はつづけます。

「でも理解はしてるんだぜ。ええっとなんだっけな、〈入れ子構造〉をなくすんだよな。〈入れ子〉ってなんだっけ? あと長いものを遠くに置くんだろ? なにから遠くに置くんだ? そもそも長い、ってなにが長いんだっけ? 理解はしてるんだぜ」

 なにひとつ理解してへんやんけと思いましたよ。

 でもこういう人、多いと思います。なんとなく本で読んだ記憶はあるんだけど、推敲時には使えてない、というね。

 

 
 なので今回の記事では、僕が推敲のときに使っている超簡単な技術を紹介します。

「すでに知ってるし、やってるよ」と言われる方も多いでしょうが、「初めて知った!」という方は 目からウロコ だと思いますよ。推敲時の作業もシンプルになるはずです。一生使える便利な技術ですので、最後までお付き合いいただければ嬉しいですね。

 

 
 
 あなたが何かを書かれました。 

 初稿の段階では、いらない言葉がまだたくさんあると思います。それが普通です。一気呵成に書くべきです。初稿の段階から整った文章にしようとしすぎると勢いが削がれてしまいます。

 初稿は混乱していてもいいんですよ。まずは書いてしまいましょう。

 初稿ができたら、

 

あってもなくてもいいものは ないほうがいい

 

 と一言、つぶやいてください。

 そして、いらないなぁと直感が告げる言葉・文章をどんどん削っていきます。「あってもなくてもどっちでもいいよなぁ」と思うと残しちゃう人、多いです。削除するのが忍びないんでしょうね。気持ちはよく分かりますが、バッサリ削ってください。これだけで グッと締まるはずですよ。(一見 削れそうでも、リズムの関係 で残さなければならない言葉というのもあります)

 

 この作業を終えたら、文章の〈係り受け〉を見ていきます。

 日本語は基本的に語順が自由です。英語などとは全く違います。日本語のユニークな点であると同時に、意味を掴みにくい文章になりやすいのも このあたりに理由があるようにも思えます。

 

 例で見ていきましょう。

 

  サイト「Blue あなたとわたしの本」は僕にとって大切なものです。

 

 という文章があったとします。この場合、「大切なものです」という受ける語句に「サイト『Blue あなたとわたしの本』は」と「僕にとって」という二つの語句が係っています。これが〈係り受け〉です。

 係る語句が複数ある場合── 三つあることも珍しくありません── 長い順から並べると分かりやすくなると言われています。大抵どの本でもこの「長い順」という言い方がされているのですが、「なにがどう長いんだっけ?」と人が言うのを僕は何度か聞いたことがあります。学んだ記憶はあるのだけれど、うろ覚えになっているんでしょうね。

 

 こう覚えてください。

 

 字数の多い係る語句を、受ける語句の遠くに置く。そのあと順に字数の少ない語句を置いていく。

 

字数の多い」という表現が使われている 文章の書きかた本は、僕の知る限りありません。どういう意味だっけ? となりづらいので良いと思うのですが、どうでしょう?

 

 サイト「Blue あなたとわたしの本」は僕にとって大切なものです。

 

 原則通り、長い(字数の多い)順に、係る語句が並んでいます。

 いちど逆にしてみましょう。

 

 僕にとって サイト「Blue あなたとわたしの本」は大切なものです。

 

 係る語句が二つだけなので分かりづらいかもしれませんが、微妙に意味を取りにくくなったと思いませんか? 日本語は語順が自由ですから、字数が多い順という原則を破ってもいいのです。「僕にとって」を前に持ってきて強調したいんだ、という場合もあるでしょう。そういうときはどうするか。

 

 原則を破って逆の並びにする場合、頭に持って来た字数の少ない語句のあとに、読点「、」を打ってください。

 

 僕にとって、サイト「Blue あなたとわたしの本」は大切なものです。

 

 これがいちばん分かりやすいじゃないか! と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。逆順にした場合、文頭一語目に読点「、」を打つと分かりやすくなります。

 僕がプロフィール欄でこちらを採用せず、

 

 サイト「Blue あなたとわたしの本」は僕にとって大切なものです。

 

 という第一の原則通り字数の多い順に並べたのは、「僕にとって、」と強調されすぎるのを避け(前に持ってくると強調されたニュアンスが出ます)、さりげない読み味を選んだからです。

 

 逆順にするときは、最初の語句のあとに読点「、」を打つと分かりやすくなるというのが第二の原則です。

  ただ 一語目のすぐあとに読点「、」を打つと、妙に野暮ったくなることがあります。「また、」「しかし、」「さらに、」などの接続詞、「僕は、」「彼は、」など主語を形成するもののあとに打つときは慎重になるべきでしょう。

 このあたりから書き手の文章センス、文体の領域に入ってきますので、各自の好みも大きいかもしれませんが。

 

 

 覚えておいていただきたいのは、

 

 受ける語句の前に置く係る語句は字数の多い順に並べる。

 

 と、

 

 意図があってこの原則を破るときは、最初の語句のあとに読点「、」を打つと分かりやすくなる。

 

 この二点です。推敲時、係り受けを見直すときはまずこれを意識してみてください。ほとんどの場合、この二つだけでも分かりやすくなります。

 

 
 もう一つ、補足させてください。

 

 係る語句が「を」で終わっている場合、たとえ字数が多くても受ける語句に近づけたほうが分かりやすくなるようです。例をあげましょう。

 

 幻想小説をKindleで読んだ。

 

 原則通り字数の多い順に係る語句が並んでいますが、なんとなく もたついている印象です。最初の語句が「を」で終わっているからです。逆順にして受ける語句に近づけてみましょう。

 

 Kindleで幻想小説を読んだ。

 

 このほうが分かりやすいようです。

 

 もう一つの技術、第一の原則を破るときは文頭の語句のあとに読点「、」を打つ、を使ってみましょう。

 

 Kindleで、幻想小説を読んだ。

 

 これがいちばん分かりやすいようです。

 

 

  
  今回の記事の要点をまとめます。

 

◯ 初稿が書けたら、「あってもなくてもいいものはないほうがいい」とつぶやき、「いらない」と直感が告げる言葉をすべて削る。

 

◯ 受ける語句の遠くに、字数の多い係る語句を置く。そのあと順に、字数の少ない語句を置いていく。

 

◯ 逆順にする場合は、文頭に持ってきた字数の少ない語句のあとに読点「、」を打つ。

 

◯ 係る語句が「を」で終わっている場合は、字数が多くても、受ける語句に近づけたほうが分かりやすくなる。

 

 

 

 推敲時に是非 お試しください。今回の記事も僕自身の備忘録をかねて執筆しました。

 どなたかのお役に立てたとしたら、こんな嬉しいことはありません。

 

 最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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 大きな状況から小さな状況へ(いつ・どこで、を先に置く)など、係る語句の語順の原則はまだありますが、今回の記事では割愛いたしました。

 

【追記】ブックマークコメントでご指摘がありました本多勝一さんの名著「日本語の作文技術」はもちろん僕も読んでいます。近年の〝文章の書き方本〟の著者も、みなあの本から多くを学ばれたであろうことは自明のように思われますので、当記事でも明記する必要さえ感じなかったというのが正直なところです。不愉快な思いをされた方には心よりおわび申し上げます。係り受けをもっと深く知りたいと言われる方には、本多勝一著「〈新版〉日本語の作文技術」朝日文庫を推薦いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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