四夜連続怪談 最終夜 妻と作る

Blue あなたとわたしの本 193

 

 

 妻と作る

 

  
 

 僕の妻はバンドを組んで歌っている。オリジナルをやる。曲はギターの男性が作り、詞は妻と僕とで作る。曲が先にでき、妻がそれを聴いたイメージを僕に伝え、僕が言葉にする。妻は「あなたはわたしのアイディアを歌詞にしているだけだ」などと言ったりもするので、「アイディアなんてものはそれだけあっても作品にはならないんだよぉ」と僕も言い返す。僕の本職はフリーのライターで、雑文全般を引き受けている。想像力、は自分で言うのもなんだがあんまりないようだ。だからじっさい妻の奇抜でカラフルなイマジネーションには舌を巻いている。たしかに妻のアイディアを僕は言葉にしているだけなのだ。彼女がその個性的な声で歌うと、単語の一つひとつがきらめき、躍動するのがわかる。ステージで輝いている妻を見るのが、僕の生きがいだったような気がする。

 だから妻が死んでしまったとき、僕は生きていく気力を失ってしまった。雑文書きの仕事もみな断った。音楽仲間との関係も断った。一日中ベッドに潜り込んでいた。際限もなく僕は眠りつづけた。
 ちょうど半年が過ぎたころだ。突然、僕の頭のなかに奇抜でカラフルなイメージが舞い降りてきた。なんだこれはと思った。イマジネーションは止まらなかった。一つひとつが青や黄色や緑の光を放っていた。それはひどく愛おしい、懐かしいものだった。僕は布団を蹴って跳ね起きた。パソコンに向かった。イメージに形を与えた。言葉にした。出来上がったものを読んでみた。あぁ、と思った。これは、と気づいた。僕は机の引き出しの奥から携帯電話を取り出し、半年ぶりに音楽仲間へメールを打った。また、書かせてもらえないか、と。
 奇抜でカラフルなイメージはいまも来つづけている。新しく入った女性ヴォーカルがその歌詞を歌っている。いろいろな歌手がカヴァーもしてくれる。だけど僕の耳の奥では妻の個性的な声が歌っている。
 
 僕たちふたりで作る、僕たちふたりの歌を。
 

f:id:btomotomo:20160422180615j:plain

 
 
 
 
 

 


 

 


 
 
 
  



にほんブログ村 ポエムブログ 写真詩へ
にほんブログ村




写真詩 ブログランキングへ




follow us in feedly




「Blue あなたとわたしの本」は毎日更新から不定期更新に切り替わりました。読者登録をご検討いただければ幸いです。ブックマーク、フェイスブック等でのシェアも大歓迎です。いつもありがとうございます。